ニャーヌッタラ大長老の説法
04

“善い思念”と“善くない思念”-2

2009(平成21)年7月の満月のウポーサタ
於 淨心庵精舎

それでは、その反対、ヨニソマナシカーラについて考えましょう。善い思念を思念する人は、自分の考えていることが善いか悪いかを知っています。善い心で考え、思い、念ずることが善い思念です。この人は、法を教える自分より優れた人に親しみ近づき、戒定慧を実践しています。善い思念を思念するので正見が増大し、自分の考えが真っ直ぐになります。原因と結果の様子を目の当たりに観て理解することができます。善くない思念の危険を観察し、恐れを抱きます。
お釈迦さまの教えの中に、「ありのままの真実を観るために、最初に正しい先生を探しなさい」とありますが、大事なことです。

サップリササンセーワ

正しい先生に親しみ、近づくこと。

サッダンマサワナン

戒定慧についての法を聴くこと。そのとき、自分の善い思念が増大します。

マナシカラニーヤナンダンマーナンマナシカーラー

善い思念を思念すること。正しい先生に付いて法を聴けば、善い思念を思念するようになります。

ダンマーヌダンマーパティパッティ

お釈迦様の教えに従って、戒定慧を実践すること。正しい先生に付いて正しい法を聞き、戒定慧を実践すれば、邪見は消えて正見が増大します。

ヨニソビッカヴェー、マナシカロトアヌッパンナチェーワサンマーディッティウッパジャティ、ウッパンナーチャサンマーディッティパワッダッティ

「比丘たちよ、善い思念を思念する人に、生じたことのない正見が生じます。既に生じた正見は増大します。」

なぜならば、その人は正しい真理を理解し、教える先生に親しみ近づき、戒定慧についての法を聴き実践しているからです。善い思念によって正見が増大すれば、正思惟も現れて、邪思惟である欲尋・瞋恚尋・害尋が減少していきます。このような人の心はブッダ・ダンマ・サンガの三宝の徳と恩へ、自分の戒定慧へ、しばしば向かいます。ついには八正道を完成して涅槃に向かいます。お釈迦さまはこのような人が死後どのように生まれ変わるかを説かれました。

サンマーディッティヤービッカヴェーサマンナーガタッサッターカーヤッサベダー
パランマラナースッガティンサッガローカンウッパッジャンティ

「比丘たちよ、善い思念を思念する人には正見が生じます。正見のある人は正思惟を備えています。そのような人は、体が壊れてのち、死後、人間・天界・梵天に生まれ変わります」

これが結果です。善い思念を思念することがいかに大事なことか分かってほしいと思います。折りにふれ、機会があるごとに、正しい真理を教える先生に親しむこと、話を聞くこと、これが大事です。お釈迦さまの教え、法についての本を読んだりすることも大切です。正しい真理が分かる先生に質問して答えを受け取ることも大切です。遠慮しないで不明確な所はどんどん質問して明らかにしていく、このような態度がテーラワーダ仏教では尊ばれます。
今現在も、そして未来、輪廻の中で流れても大事なことは、“ヨニソマナシカーラ/善い思念”を思念することです。善い思念が増大し正見が生じます。正見が増大して正思惟が生じます。八正道の完成へと近づきます。

それでは、ヨニソマナシカーラが向上するにはどうしたらよいか。ヨニソマナシカーラが向上するには次の6つの方法があります。

生命の真理についての説法を聴くこと、話し合うこと。

より善い生き方は何ですか。悪い生き方は何ですか。このことについて研究することは善い思念を思念することにつながります。

三宝(ブッダ・ダンマ・サンガ)についての説法を聴くこと、話し合うこと。

ブッダ・ダンマ・サンガの徳と恩についての説法を聴くべきです。話し合うべきです。三宝の徳と恩を識る人は、本当の布施を行なって功徳を得ます。善い思念が増大します。

カルマとカルマの結果についての説法を聴くこと、話し合うこと。

カルマとカルマの結果を信じなければ、善くない思念を恐れない。悪い行いも平気でやるようになります。

過去世・今世・来世についての説法を聴くこと、話し合うこと。

過去世・今世・来世を信じない人は、昨日・今日・明日を信じない人と同じです。昨日は終わりました。でも(昨日を)見せることはできません。明日はまだ現れない。(明日を)見せることはできません。でも、昨日がないとはいわない。明日がないとはいわない。原因と結果を正しく理解する人は、輪廻について迷いません。善くない思念の結果に恐れを抱きます。

輪廻と解脱についての説法を聴くこと、話し合うこと。

ある人は輪廻を信じることができない。説法も聴かない。心をきれいにしようと思わない。だから善くない思念が増えます。

解脱の道である八正道についての説法を聴くこと、話し合うこと。

戒定慧についての説法を聴くべきです。話し合うべきです。 このようにすれば、善い思念が増大することになります。正しい実践へとつながります。

ですから、この6つを忘れないで、この6つについての説法を聴いたり話し合ったりしてください。そして実践してください。善い思念が増大すれば正見が現れ、正思惟が現れ、八正道を完成して輪廻解脱に向かうことができます。
人によって心の有様は様々ですが、多くの人々は自分の心に生じる思念に無意識で、ほとんどが善くない思念であることが普通です。善い思念の増大、成長に努める人はごく少数です。皆さんは“アヨニソマナシカーラ・善くない思念”がどのような結果に導くのか、どのような危険をもたらすのかを観察してください。観察して理解したら、“アヨニソマナシカーラ・善くない思念”をできるだけ捨てて、“ヨニソマナシカーラ・善い思念”がたくさん生じるようにがんばりましょう。それが本当の幸福への王道です。

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