ニャーヌッタラ大長老の説法
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誕生日の説法−2

2011(平成23)年8月17日
於 淨心庵精舎

生・老・病・死を超越した世界が分からない一般的な人々は、誕生日が来ると五欲を求めて楽しんでいます。しかし、ありのままに見れば誕生日とは1年、年を取ったということです。1年、年を取ったということは、それだけ自分の死が近づいたということなのです。年が経つと共に歳も増えていきます。老化して死の近くに向かっていきます。1年だけではない。この今も、瞬間瞬間にナーマ(心)とルーパ(身体)は川の流れのように止まることなく、壊れて変化していきます。

すべての生命はいつかには老化して死にます。このことをテーラワーダ仏教では、ジーヴィティンドリヤン ウパッチェダ マラナン「命根《みょうこん》の断絶による死」と呼びます。
ジーヴィティンドリヤン「命根」とは、今世での寿命を支える心の働きのことです。これがなくなったら生命は死にます。ジーヴィティンドリヤン「命根」が働いている限り、生命の寿命は続きます。命根が続くかどうかはカルマによって決まっています。

事故などで急に亡くなることはあっても、誰もそれを延ばしたり縮めたりすることはできない。カルマによって命根が働いている間に、積むべき功徳を積んで正しい真理が分かるようにがんばるのが本当の幸せです。セヤドーの命根も今日まで働いているから今日の誕生日になりました。命根の働きがなくなるとき、生命は死にます。

しかし、お釈迦さまの説かれた真理から観れば、瞬間瞬間にナーマとルーパは壊れて滅して変化していきます。ナーマとルーパにとっては、この瞬間に滅することも死なのです。これをカニカ マラナといいます。「瞬間の死」という意味です。
実は、死とは今、今、瞬間瞬間に起こっているのです。これはヴィパッサナー瞑想で生滅を観るとき、分かります。

このようなありのままの真理を観ないから、不安や心配が生じています。未来にどのように老化するか、どのように死ぬかは、思考・妄想の中だけのこと。ナーマとルーパが壊れて変化することをヴィパッサナー瞑想の方法で観察しながら、今、今を過ごしたら、老化や病気や死の不安・心配がなくなります。このような生活は生きているもいい、死んだ後もいい。とても安心しています。

一般的な人々は、煩悩を増やすためにもっと生きたい。だから、輪廻から出られない。智慧ある人は、功徳を増やすために生きる。だから、輪廻からの解放に向かいます。皆さんは、自分の誕生日を迎えて新しい年齢になったら、前の古い年齢の自分を振り返ってみて、もし悪行があったら増やさないように消して、善行がたくさん出来るようにがんばってください。

ナーマとルーパは瞬間瞬間に誕生して死んでいるから、瞬間瞬間に生じては滅しているから、瞬間瞬間に新しい。このようなナーマとルーパをよく観察・洞察して、悪い心が出ないように、いつも善く気づいて守ってください。
このようにして自分のできる功徳を積んで心静かに住むとき、幸せです。これが智慧のある人が迎える誕生日なのです。命終わるとき、次の世界に持っていけるのは、功徳の力と智慧だけですから。

今日、セヤドーの誕生日にお集まりになった皆さんが、幸せでありますように。生きとし生けるものが幸せでありますように。
それでは、皆さんは今日の誕生日の説法を聴いたので、喜びの心で三回、サードゥ、サードゥと言いましょう。

サードゥ、サードゥ、サードゥ

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