ニャーヌッタラ大長老の説法
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世界から解脱するための5つのこと-5

2008(平成20)年1月15日ウポサタ
於 淨心庵精舎での夜の法話

4.正しい努力をすること

4番目は“正しい努力をすること”です。正しい努力をすることは大事なことです。自分の努力を悪いことに使わないで、自分の人生を善くするために努力することは大事なことです。ある人は自分の努力を悪いことに使っています。そのような人が多いです。自分の努力を何のために使うかどうか、自分自身で観察・洞察してください。お寺の中では、皆さんは朝早く起きてから夜寝るまでの間、瞑想の時間は瞑想し、礼拝の時間は礼拝し、勉強の時間は勉強し、作務の時間は作務をしています。これら一人一人の努力は“正しい努力”です。

瞑想するとき “正しい努力”を自分自身で観察・洞察してください。そのとき“正しい努力”はもっと強くなって、八正道の1つである正精進(サンマー ワーヤーマ)になります。ときどき、自分の努力を自分で観ています。自分の努力を観るとき、怠けはほとんど観えない。怠けはほとんど観えないですから、自分の正精進はとても高くなります。正精進、努力がはっきりわかったら、自分の努力がどういう意味かどうか自分自身でわかります。自分自身の努力を観察・洞察することも瞑想です。「私の努力はとても優れた努力である。怠けも出ない。」このような自分自身の努力を観察・洞察するとき、自分自身でうれしくなるほど、自分の正精進が観えると思います。今まであった自分の怠けは今はない。もっと正精進を実践したから、怠けはほとんど観えない。

怠けの反対は正精進・努力です。怠けをパーリでは

Thīnaティーナ

といいます。

Thīnaティーナ

とは十煩悩の中の1つです。十煩悩とは、貪り、怒り、無明、慢、邪見、疑い、怠け、浮つき、無慚《むざん》、無愧《むき》の十の煩悩です。
怠けのある人は何もできない。自分自身の努力が正精進になるためにがんばってください。

自分の人生を善くするためには努力は大事なことです。しかし、自分の努力を“正しい努力”にすることが、もっと大事なことなのです。

世界の中でも努力する人と怠けのある人の人生は違います。怠けのある人の人生は完璧になりません。
努力してがんばっている人には、家族のためにも、社会のためにも、自分の国のためにも、世界のためにもなる努力の結果が得られます。だから、皆さんは“正しい努力”を使ってください。悪行を除くために努力することが大事なことです。皆さんが毎日毎日努力するのは、悪行が入らないためです。悪行を除くためです。悪行を除いて、善行を進めるために努力をすることが“正しい努力”です。

お釈迦さまは、4つの“正しい努力”について、次のように教えられました。

4つの"正しい努力"

  1. まだ、生じていない悪行が生じないように努力する。
  2. 今までの習慣で生じてしまう悪行がまた、生じないように努力する。
  3. まだ、生じていない善行が生じるように努力する。
  4. 今まで、したことがある善行をさらに進めるように努力する。

お釈迦さまは、このような“正しい努力”は、道《どう》の智慧・果《か》の智慧・涅槃に向かうために大切なことです、と教えられました。

正しい努力が心に出たら、注意力、禅定が出ます。禅定・正しい努力・注意力、この3つが組み合わさるとき、自分の禅定がもっと高くなります。そして智慧が顕れます。だからお釈迦さまは、最後の5番目に、道の智慧・果の智慧・涅槃に向かうために必要なことは“正しい智慧”と教えられました。

(次号へ続く)

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