テーラワーダ比丘出家に至るまで(2)

2.見習出家の段階へ

ニャーナーローカ比丘

こうして、2007年8月19日、浄心庵で見習出家儀式を迎えることになり、ニャーナーローカという出家者としての名前をいただき晴れて見習出家となりました。
見習出家としては新たに10戒を備える事になります。八戒の第七戒条が「踊り、歌謡、演奏、演劇などを見ること聴くことから離れる。」と「花飾り 香水 化粧を身につけ、装飾品で飾り立てることから離れる。」に分かれて2つになります。そして新たに「金、銀、貨幣を受けとらない。」という重要な一項が加わり、事実上、一般在家の生活からの出離が宣言されます。つまり、在家信者の布施によって身を養う者になるわけです。

見習出家の習慣に慣れたあとは比丘出家の段階を目指して比丘出家儀式、比丘の日常習慣の学習が始まりました。見習出家として学ぶべきことは多くありますが、来るべき比丘出家に向けて227戒の学習が主たるものになります。
ニャーヌッタラ長老のご指導のもと戒律の条項をパーリから日本語に移す作業はやりがいのある楽しい学びの機会でした。テーラワーダ仏教の戒律は他の宗教のものとは異なり、お釈迦様がその時その時のケースバイケースで定められたものです。お釈迦様がご自身の智慧によって戒められていると感じられました。また、サンガの生活習慣が2500年前から何一つ変わることなく今日まで長老達により比丘に伝承され、その通りに実践されている事を知りました。

比丘出家になると台所に入ることができなくなるというので、見習出家の内に長老を始めとして浄心庵の修行者の食事のお世話を短期間ですが、させていただくこともできました。浄心庵に瞑想に来られる方々を見て常々思うことは、瞑想環境が整うということはたとえそれが十日間であっても無数の因縁の結果として生じることで特別なことなのだということです。
そして、そのような瞑想者のお世話をすることは非常に優れた功徳なのだとニャーヌッタラ長老は度々強調されました。浄心庵の瞑想会では自ら進んで台所仕事の手伝いを申し出たりする瞑想者の方もおられ、作務の功徳が瞑想修行の推進力になるという理解が広まっているようでした。私も将来の自分の瞑想修行のための善根を植えさせていただいたと有難く思っています。

見習出家となってから2年が瞬く間に過ぎました。ニャーヌッタラ長老は「これで比丘出家のための準備学習は全ておわりました。どうですか、比丘になりたい気持ちは変わっていませんか。」と問われました。私は「ミャンマーで一時出家した時は何も分かっていませんでしたが、今は長老のおかげで比丘出家の意味が深くわかりました。」と答え、あらためて比丘出家をお願いしたのでした。ニャーヌッタラ長老は私の決心を受け入れられ、ヤンゴンの僧院に国際電話をかけて比丘出家儀式のための準備を始められました。
そして、ついに比丘出家儀式のためミャンマーに再び渡航する日を迎えました。2ヶ月間ほどの滞在でしたが、前の1年間半の滞在とは比較にならぬほどに有意義な滞在となりました。今回はニャーヌッタラ長老をはじめとして上座仏教修道会有志のメンバーと一緒です。前回のたった1人での右も左も分からぬ心細いミャンマー入国を思い出し、感無量でした。

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