2009-2010(平成22)年 年末年始10日間宿泊瞑想会に参加された方の感想

2010年5月10日(月)

清浄道はサンガとともに

鹿島灘からほど近い森林の中にたたずむ浄心庵は、都会の雑踏の中では決して得ることができない絶好の瞑想環境を用意していつも修行者を暖かく包んでくれます。
そのような中、2009年末から2010年初頭にかけて行われたリトリートは生涯忘れることができない素晴らしいものとなりました。

振りかえると、初めてテーラワーダ仏教に触れた2004年当時、外見的には順風満帆を装いながら、世俗的な欲に溺れて生活は乱れ、仕事も家庭も崩壊寸前でした。藁をもすがる思いで手に取った大乗仏教の入門書をきっかけに、何かに導かれるようにして清浄道を懸命に歩き続けることになりました。

ニャーヌッタラ・セヤドウに初めて出会ったのは2006年の冬の宿泊瞑想会です。長期のリトリートは初めてでしたが、母親のように暖かく迎えてくださった竹田先生の笑顔に、一気に緊張が緩みました。
本物のテーラワーダ比丘に身近で瞑想指導を受けるのは初めてで、どのように対応していいか勝手がわからず、随分と失礼な振る舞いをしてしまったのではないかと思います。

しかしセヤドウは全く気にする素振りを見せずに、ヴィパッサナー瞑想の基礎と心構えを実に丁寧に、手取り足とり教えてくださいました。「お国に帰ればとても偉い立場にあるだろうに、見ず知らずの私にここまでしてくださるとは」と感激ひとしおでした。
また、吸い込まれそうなセヤドウの透き通った眼がとても印象的でした。しかし自分は未熟でセヤドウの教えを生かせる状況にはまだ無いと感じ、その後はしばらくセヤドウの元を離れて波羅蜜を積むことに専念しました。そして今回また導かれるようにして浄心庵を訪れることになったのです。

何年も経っているのに、セヤドウも竹田先生もまるで昨日まで一緒にいたかのように、親しみをこめて迎えてくださり、私も帰るべき所にまた戻って来たかのような不思議な気持になりました。体調も絶好調でこれ以上望むべくもない好スタートを切ることができました。

3年前とは異なり、セヤドウの指導の一つ一つが身にしみて実感として理解できる、そんな感じがしました。真冬の静寂の中、サティを切らさないように気をつけながら、黙々と修行を続けました。そのような中、リトリートも終盤にかかった時の面接でセヤドウが力を込めておっしゃいました。

「ヴィパッサナー瞑想はブッダが作られた大きな修行体系の中でこそ真価を発揮するものです。瞑想だけ取り出しても決して成果を得ることはできません。仏教を支えるブッダ・ダンマ・サンガに心から敬意を表し、礼拝・帰依し、身も心も預けるつもりで取り組んでください。戒律をよく守り、真理を伝え守ってきたサンガの力を借りて、お釈迦様の説かれた八正道を歩んでください。」

セヤドウのこの言葉に胸打たれ、湧き上がる精進のエネルギーに包まれて、一歩、また一歩と細心の注意を払いながら瞑想堂へ向いました。照明を落とした瞑想堂の中、心も身体も澄み切った最高の状態で延々と歩行瞑想を続けました。次第に鮮明になっていくナーマ・ルーパの生滅、生命存在の真実の姿を目の当たりにするうちに、自分も、周囲の瞑想者も、そして全ての生命が哀れで切なくてどうしようもない存在に思えて来ました。欲が生存を生み、生存がまた欲を生む、まさに罠に捉われて身動きできない、そんな生命の姿はあまりにも悲しく、絶望的です。

そのような中、ライトアップされた仏像にふと目を移すと、そこに白い光に包まれた出口、小さいけれどもしっかりとした脱出の糸口が現れて、救いの光を投げかけているように思われました。その瞬間、全身が歓喜で身震いし、三宝への感謝の念から涙があふれ出てきました。自らの身を投げ打って輪廻を打ち破る方法を探り当て、誰にでも実践出来る形で説き明かし、そして後世に残してくださったブッダのご努力と叡智、憐れみの心にただただ尊く頭が下がるばかりです。

またブッダの教えを頑なに守り、2500年を超える時を経て真理をここに届けてくださったサンガ、気がつくと頬をつたう涙をぬぐうのも忘れ、深々と礼拝していました。

「ナモー・ブッダッサ、ブッダに心から礼拝・感謝します。
ナモー・ダンマッサ、ダンマに心から礼拝・感謝します。
ナモー・サンガッサ、サンガに心の底から礼拝・感謝します。」

生まれて初めて、本当の礼拝・帰依ができたそんな気持ちになりました。

「サンガに感謝します、セヤドウに感謝します、セヤドウをお招きくださった竹田先生に感謝します・・・」。

翌日朝、短い面接でこの様子をセヤドウに報告し、快晴の中、リトリートに終わりを告げました。

最後に瞑想堂にとても良い雰囲気を作ってくださったニャーナローカ比丘、また瞑想修行を下支えしてくださった吉田正学女、佐竹様、小山田様、そしてボランティアの方々に深く感謝いたします。皆さまに三宝のご加護がありますように。皆さまが末永く幸福でありますように。全ての生命が苦しみの輪廻から逃れて幸せになれますように。合掌。

影山幸雄

浄心庵精舎 メンタルフレンドハウス

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